ハードワークを望まれる日本式の勤労形態を否定するには、まず本当に日本式の勤労形態そのものが世界とくらべて劣っているものなのかどうか、ちゃんと理解をしておかないといけない。
そういう観点では、先日読んだこの書籍はなかなか興味深い内容だったので、ご紹介しておきます。 日本式と欧米式の社会を見比べて、双方のメリット・デメリットを紐解く「日本で働くのは本当に損なのか」です。
日本で働くのは本当に損なのか
日本式と欧米式
日本型が残っている理由もメカニズムとしてしっかり説明していきます。それが分かれば、日本型の変えるべき部分も明確になり、また、日本型への批判ももう少し現実的で的を射たものとなるでしょう。
つまり、この本は、ある面、日本型礼賛でもあり、ある面、日本型批判の礎ともなるはずです。
さてこの本では、勤労形態を大きく分けて下記の二つに大別されるとしています。
日本式:
総エリート方式 (ほぼ全員が年齢とともに昇給していく)
欧米式:
エリート/ヒラ方式 (入社時点でエリートとヒラに分かれ、昇給幅も大きく別れる)
欧米式
欧米ではエリートとヒラにはっきり別れる。 エリートはハードワークはヒラの数倍の給料を取る反面、勤務時間や責任はヒラに及ばないハードワークとなるのだそうな。 一方のヒラコースはライフワークバランスが取れた(その分、年齢を重ねても給料も上がらないが)生活になるという。
欧米型労働では、多くの人が出世できない。ただし、その分、二つのメリットがあります。
一つは、このように、女性の労働参加、男性の家事参加が進むこと。もう一つは、「管理職ポストに座って腕が鈍った高給熟年」が少なく、熟年以降でも、低給で実務をこなすために、錆びないのです。つまり、高齢者でもその気があれば働ける。 そう、女性と高齢者の労働参加という意味では、欧米型に圧倒的に軍配が上がるのです。
日本式
誰もがエリートコースの階段をほぼ平等に登ることになる日本式は、限られた席を奪い合い・蹴落とし合いとなりづらく、助け合いが事前に生まれる風土が保たれている、のだとか。
日本では、ポストがなくても能力アップすれば給料は上がる。 だから、社内で地道に能力アップに励む。 欧米だと、ポストがない限り、給料は上がらない。 だからポストが埋まっていれば、それを求めて外に出る。 こうした構造の違いがあるから、転職率にも差が生まれるのです。
社内の雰囲気について考えてみましょう。 日本は、ポストがなくても能力の研鑽で昇級も昇格も可能です。つまり、上位ポスト者を蹴落とす必要がありません。 だから上司は安心して部下を教えられる。つまり、和気あいあいと、上司が部下を教える好循環が生まれます。
ある意味では平等ですばらしいのだけど、全員をエリートとして歩ませるための体制となっているために社員全員が均等に「ハードワーク」な働き方になってしまうわけなので、日本式の働き方の方が選択肢がない分・やはり損なんじゃないだろうか…。
ハードワークを望まない人は、日本国内では自動的にアルバイトのレベルまで落とされてしまうわけで、ある程度の文化的な生活+自分の時間を確保できるという勤務形態は、今の日本にはあまり存在していないような気がする。
日本式の課題点
序盤は日本式のメリットについて多く語り、後半はその日本式のデメリットについて語られてます。
やはり心情的には日本式の勤労形態については不満点が多いし、この形態に馴染めないが故に僕は苦労しているわけなのだ…とはいえ、ただ盲信的に日本式を否定するのではなく、欧米式を含めた両者のメリット・デメリットを知った上で物事を語るためには、この本は必要な知識といえるかもしれない。
まず闇雲に日本式を否定する前に、把握しておくべき内容でありますね。 その点では、この本は大いに為になります。
本書では日本式の勤労形態が限界に来ていることをふまえた上で、どのように制度を変えていくべきか、提案という形でひとつの答えを出しています。
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